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十二指腸がん内視鏡治療後の合併症予防に再生医療

2021年01月18日

長崎大学とテルモ株式会社の共同研究講座である「消化器再生医療学講座」の 金高賢悟教授らは十二指腸がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(以下ESD)後の重篤な合併症である穿孔を自己筋芽細胞シート貼付にて予防出来ることを大動物(ブタ)実験で明らかにしました。この成果はCell Transplantation誌にオンライン掲載されました。

The Efficacy of Autologous Myoblast Sheet Transplantation to Prevent Perforation After Duodenal Endoscopic Submucosal Dissection in Porcine Model. R Matsumoto, K Kanetaka, et al., Cell Transplant. Jan-Dec 2020; 29:963689720963882. doi: 10.1177/09636897209638822.

本件のポイント
・脚の筋肉の細胞から作製した細胞シートを十二指腸ESD後の腸管壁の外側に貼付することで、十二指腸ESD後の穿孔を予防可能であることを報告しました。

・今後、十二指腸早期がんの患者さんに医師主導治験を行う準備を進めています。

研究の概要
早期に発見された十二指腸がんは、胃がんや大腸がんと同様にESDで取り除くことが出来るようになりました。しかし、十二指腸は腸管が狭く屈曲しているうえに、消化管壁が非常に薄く、更に刺激の強い胆汁や膵液に暴露されるという特性から最大30%と他の消化管に比べて高確率で術後穿孔を来すことが問題点として挙げられます。穿孔が起きると、消化酵素を含む胆汁や膵液が腹腔内に広がり腹膜炎などを発症するため、緊急手術や十二指腸を切除する必要があるなど、患者さんの負担が大きくなります。
  本研究では、ブタの脚から骨格筋を採取し、骨格筋由来の細胞シートを作製。その後、ブタの十二指腸でESDを施術し、十二指腸の外側から細胞シートを貼付した5頭と、細胞シートを移植せずに内臓脂肪のみを被覆した5頭とを比較しました。内臓脂肪にて被覆した5頭では全例術後3日目に穿孔を認めましたが、細胞シートを貼付した5頭では全例で穿孔は生じず、細胞シートの穿孔予防効果が確認されました。細胞シートは自身の細胞から作られ、貼付によって絆創膏のような役割を果たしますが、その組織の一部に変化するのではなく、治癒能力を高める物質を出して治癒を促進すると考えられています。
  本研究は長崎大学移植・消化器外科 江口 晋教授を中心に「自己筋芽細胞シートを用いた消化器再生医療と腹腔鏡デリバリーデバイスの開発」を目的に、長崎大学第3期重点研究課題(2017〜2021年度まで)として支援を受け進められていたプロジェクトの一つであり、2019年1月より、すでに重症心不全の患者の心筋再生手術に使われるヒト(自己)骨格筋由来細胞シート「ハートシート」を製造販売しているテルモ株式会社と共同研究講座「消化器再生医療学講座」として更なる研究を進めておりました。
  本研究は大動物実験で細胞シートの穿孔予防効果を確認したものであり、今後、実際の患者さんに対する細胞シートによる消化器再生医療を実現する上で重要なステップであると考えられます。また、患者さんの負担が少なくなるように腹腔鏡手術で細胞シートを移植するためのデバイスの開発も長崎大学工学部山本郁夫教授らと進めており、特許出願もされております。
  これらの成果を基にAMED(日本医療開発機構)の令和2年度再生医療実用化研究事業に採択され、2021年4月以降で医師主導治験を長崎大学病院で開始する予定で準備を進めております。

研究の概要
筋芽細胞シート移植

◆研究内容の詳細は下記までお問い合せください。
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科
消化器再生医療学講座 助教
丸屋 安広
E-mail: maruya0626@nagasaki-u.ac.jp (*を@に変換してください)

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