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イムノコンプレキソーム解析法の創製と晩期関節リウマチ新規バイオマーカーの同定

大山要テニュアトラック助教(重点研究課題長崎大学がん・ゲノム不安定性研究拠点、医歯薬学総合研究科)と黒田直敬教授(医歯薬学総合研究科)の研究グループは,血清中の免疫複合体を網羅的に解析するイムノコンプレキソーム解析法を開発し,晩期関節リウマチ(RA)患者の血清中に特有の免疫複合体が存在することを明らかにした。

 

抗体は本来、非自己である生体異物を認識して免疫複合体を形成し、液性免疫のトリガーとなる働きを持つ。しかし,抗体は非自己に対してのみ産生されるとは限らず,自己免疫疾患では病態に深くかかわる自己抗体が存在することが広く知られており,また複数の固形癌において自己抗体が早期の段階から産生されていることも報告されている。これら抗体と抗原が形成する免疫複合体は多くの疾患に関与している可能性があり,免疫複合体の解析が臨床診断や病態解明に有益な情報を与えると考えられる。

 

研究グループは血液中で免疫複合体を形成している抗原を網羅的に解析する“イムノコンプレキソーム解析法”を新たに開発し(特願2010-231935),RA患者の血清試料へ応用した。RAの比較対象を健常人及び変形性関節症患者とし,本解析法で同定された抗原タンパク質について比較した結果、健常人及び変形性関節症患者では全く検出されず、RA患者でのみ高頻度に検出される2種類の抗原タンパク質 (Thrombospondin-1及びPlatelet factor4) が存在することがわかった。特に,Thrombospondin-1の検出感度は81%と高く、従来からRAの判定に利用されてきた抗CCP抗体よりも高い感度であり,RA診断の新たなバイオマーカーとして期待できることが示された。

 

 

本研究の成果は「Clinical Chemistry」2011年6月号に掲載された。