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アルツハイマー病の血管からの投与による遺伝子治療実験に成功

2013年03月19日

−簡便な方法でアルツハイマー病予防となる潜在力をもつ−
《本研究成果のポイント》
○血管内に投与して脳内の神経細胞だけに遺伝子発現するウイルスベクターを開発
○アルツハイマー病モデルマウスの認知機能が野生型マウスレベルに回復
○大量に生産する技術の開発や安全性の問題などが解決されれば、臨床応用も

理化学研究所(野依良治理事長)と長崎大学(片峰茂学長)は共同で、血管内に投与して脳内だけに遺伝子発現させるウイルスベクターを開発し、学習・記憶能力が低下したアルツハイマー病モデルマウスを野生型マウスのレベルにまで回復させる遺伝子治療に成功しました。これは、理研脳科学総合研究センター(利根川進センター長)神経蛋白制御研究チームの西道(サイドウ)隆臣シニア・チームリーダーと、長崎大学薬学部の岩田修永(ノブヒサ)教授ら、自治医科大学 村松慎一教授、放射線医学総合研究所 樋口真人チームリーダーらとの共同研究グループによる成果です。

従来、脳疾患における遺伝子治療では、外科的手術により直接脳内に効果が期待される遺伝子を組み込んだウイルスベクターを注入していました。しかし、この治療法は簡便性に欠け、遺伝子の局所注入という制約条件があるため広範な脳領域への遺伝子導入は困難でした。共同研究グループは、循環している血管内に投与し脳内の神経細胞だけに遺伝子発現させる「血管内投与型の脳内遺伝子発現ベクター」を開発しました。このウイルスベクターにアルツハイマー病の原因となるアミロイドβぺプチド(Aβ)を分解する酵素「ネプリライシン」の遺伝子を組み込んで、アルツハイマー病モデルマウスに対して遺伝子治療を施したところ、脳内のアミロイドや神経毒性が強いとされるAβオリゴマー(Aβが複数結合したもの)の量を減少させ、障害を受けていた学習・記憶能力を野生型マウスのレベルまで回復させることに成功しました。

今回開発したウイルスベクターは、中枢神経系疾患の遺伝子治療の概念を変える革新的な技術であり、若年発症型のものを含めて全てのアルツハイマー病患者の根本的な予防や治療法となる潜在力があると考えられます。ウイルスベクターを迅速かつ大量に生産する技術の開発や安全性の問題などが解決されれば、臨床応用も期待できます。

本研究成果は、文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究「シナプス・ニューロサーキットパソロジーの創成」(領域代表 岡澤均 東京医科歯科大学教授)および文部科学省委託事業「分子イメージング研究戦略推進プログラム」の助成を受けて行われたもので、英国のオンライン科学雑誌『Scientific Reports』(3月18日付:日本時間3月18日)に掲載されました。

共同で行ったプレスリリース

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