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がん生物学から再生医療へ〜細胞極性因子の新たな機能を発見〜

長崎大学原爆後障害医療研究所の小野悠介テニュアトラック助教らは,Scribとよばれる細胞極性因子が骨格筋の再生において重要な役割を担うことを発見しました。

Scribは,細胞極性を制御するタンパク質(細胞極性因子)の1つです。Scribは,整然とした上皮構造の維持および上皮細胞の増殖を抑制する「がん抑制遺伝子」として知られています。実際,大腸がんや乳がんなどほぼ全ての上皮性がんに共通してScribの発現低下や局在異常が観察されており,がん生物学の研究領域で注目されています。しかし,生体組織の修復・再生を司る組織幹細胞におけるScribの役割については分かっていませんでした。

今回,研究グループは,骨格筋の再生治療応用で期待されている「サテライト細胞」と呼ばれる骨格筋の組織幹細胞に着目し,Scribの機能を調べました。その結果,Scribは用量依存的に,サテライト細胞の増殖,分化,自己複製などの幹細胞の運命決定を巧みに制御することで,骨格筋再生において中心的な役割を担っていることが明らかになりました。

本研究は,これまで報告されてきた上皮細胞におけるScribの機能とは異なり,組織幹細胞における細胞極性因子の新たな側面を見出しました。本研究成果は,がん生物学分野への新たな知見をもたらすのみならず,筋ジストロフィーなどの遺伝性筋疾患や世界的に増加の一途を辿る加齢性筋肉減弱症(サルコペニア)における病態解明あるいは筋再生治療開発の手がかりになる可能性があります。

本研究成果は,米国生命科学誌「Cell Reports (セルリポーツ)」(2015年2月19日付) 電子版に掲載されます。

詳しい研究内容はこちらのPDF(1.10 MiB)をご覧ください。

 

問い合わせ先(責任著者):小野 悠介
長崎大学原爆後障害医療研究所幹細胞生物学研究分野
〒852-8523
長崎市坂本1-12-4
Tel:095-819-7099
e-mail:yusuke-ono@nagasaki-u.ac.jp