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沿岸海域の持続的な資源管理に関する国際シンポジウム実施報告

2011年01月26日

 1月19日から1月21日にかけて,長崎大学水産学部および長崎大学環東シナ海海洋環境資源研究センターの共催で,沿岸海域の持続的な資源管理に関する国際シンポジウム(International Symposium on the Sustainability and Productivity of Coastal Resources)が,長崎大学医学部良順会館ボードインホールにて行われました。

 地球温暖化に代表される全球的な環境問題から,大都市域周辺の人為汚染による地域環境問題まで,様々な複合的なストレスによって,沿岸,縁辺海の海域環境,および,海域生態系はダメージを受けています。特に,東シナ海や日中韓台の沿岸域は,大陸や都市域からの栄養塩物質が大陸棚や浅海域に流れ込むことによって生産性に富んだ海域を形成していましたが,近年では,世界の中でも生態系の劣化が危惧される代表的な海域とされており,漁業資源の減少も著しい海域です。
 これらの現象を理解し,対応策を構築していくためには,海域だけでなく,陸域も含めた水循環,物質循環の理解,また,一次生産者から高次捕食者までを見据えた生態系の理解が必要とされているところです。この国際シンポジウムは,今後,これらの領域において中心的な役割を担っていくアジア・環太平洋地域の若手研究者(日本,中国,韓国,台湾,フィリピン,タイ,インドネシア,米国,カナダ,ニュージーランド,英国,ドイツ,ベルギーから50名ほど)が顔を合わせ,それぞれの分野の最新の研究を紹介するとともに,今後の国際共同研究を模索していくことを目的に開催されました。

シンポジウム初日は,主に海洋化学や情報工学の立場から「生態系に影響を与えうる物質循環の解明」に焦点をあてて,Kon-Kee Liu氏(国立中央大学(台湾)教授,カリフォルニア大Davis校客員教授,IMBER&LOICZによる縁辺海域問題解決チーム(CMTT)のリーダー)の基調講演のあと,10件の口頭発表が行われました。
 このセッションでは,リモートセンシングや同位体分析の最新技術解析,調査船の利用機会,取得データを共用することで,理解を深めていくための具体的な手順についての議論が行われました。

2日目には,主に生態学,生物学研究の立場から「環境変化に対する生態系の応答」に焦点をあてて,仲岡雅裕氏(北海道大学北方生物圏フィールド科学研究センター厚岸臨海実験所 所長)の基調講演に続いて,10件の口頭発表が行われました。
 このセッションでは,長崎大学の環東シナ海海洋環境資源研究センターで取り組んでいる「海洋酸性化が海洋生物に与える影響評価」を中心に,海草藻場の健全性や,沿岸域の漁業資源の推移について議論が行われ,地道なモニタリングの重要性や,異なる生物種の環境応答の違いについて実験系で丹念に明らかにしていくことの必要性についての議論が行われました。

2つのセッションの後のまとめのセッションでは,科学的な研究だけでなく,環境問題に関わる利害関係者を明らかにし,環境に影響を与える人間活動を変えていくことや,適応策の構築についてまで,広く議論が行われました。今後,2012年に日本の滋賀県で開かれるASLO(アメリカ陸水海洋学会)などで,再びミニシンポジウムを開いて議論を続けていくことを検討し,シンポジウムを終了しました。

21日には,フィールド巡検を実施し,諫早湾の潮受堤防や,雲仙島原市の地下水湧水地帯などを回り,日本の沿岸環境の現状を伝えると共に,各国の事例(沿岸改変と生態系の変化)とそれへの対策について,意見交換を行いました。

なお,本シンポジウムは,長崎大学の科学振興調整費事業「地方総合大学における若手人材育成戦略」の援助を受けて行っております。

 (水産学部:梅澤 有&環シナセンター:Greg Nishihara)

基調講演をしているK.K. Liu カリフォルニア大デービス校客員教授
基調講演をしている
K.K. Liu客員教授
(カリフォルニア大デービス校)

話題提供をする長崎大学  G. Nishihara助教
話題提供をする
G. Nishihara助教
(長崎大学)

話題提供をする琉球大学  K. White PD研究員
話題提供をする
K. White PD研究員
(琉球大学)

会場の様子
会場の様子

 

諫早潮受堤防の視察
諫早潮受堤防の視察

 

 

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