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学長コメント「東日本巨大地震被災地に思いを馳せて」

2011年03月15日

 大変なことが起こってしまいました。3月11日の東日本巨大地震です。マグニチュード9.0、観測史上世界最大級の揺れと津波が、東日本の広い範囲を襲ったのです。私も、東京の羽田空港でこの揺れに遭遇しましたが、震源から遠く離れた場所にもかかわらず、強烈な衝撃でした。巨大地震により建物は倒壊し、巨大津波は瞬時にして街全体をのみこんでしまいました。陸前高田、大船渡、気仙沼、南三陸・・、TVで繰り返し流される跡形もなく破壊されつくされた都市を映した上空からの映像は、66年前の長崎の悲しい記憶、原子野の光景と重なるものでした。そして、東京電力福島第一原子力発電所において重篤な事故が発生。周辺地域の放射能汚染とともに、日本の電力供給体制の破綻が強く懸念される事態に立ち至っています。

 TVに頻繁に登場する地震や津波や原子力発電の専門家から異口同音に"想定をはるかに超える規模"という言葉が語られます。おそらく、そうだったのでしょう。日本は、来るべき大地震に備えて、長年にわたって巨費を投入して研究を蓄積し、災害防止のための構造物を建造してきました。しかし、人類が蓄積してきた科学や知恵が、自然の力の前にはいかにちっぽけなものであるのかを思い知らされました。まだまだ、科学はほとんど何も解明していないのです。科学者は自然に対してあくまで謙虚であるべきことを再認識させられました。

 今回の大惨事が、戦後日本が直面する最大の危機につながることは、日本人全員が認識しているはずです。映像メディアから流される被災地の惨状から目をそらしてはいけません。われわれは、被災地で今何が起こっているのかをしっかりと見届ける必要があります。不幸にも、この震災で亡くなった方々の無念や、最愛の家族を奪われた遺族の皆様の悲しみに思いを致し、これから被災地や日本という国を襲うであろう困難を見据えなければなりません。そして、それぞれの組織が、あるいは個人が、何ができるのか何をなすべきなのかを熟慮し、決断し、躊躇することなく、しかも規律をもって行動に移す必要があると思います。それだけの大危機だと思います。

 長崎大学は、3月12日、県の要請を受けて、直ちに災害派遣医療チーム「長崎大学病院DMAT」を被災地に派遣。翌13日には、熱帯医学研究所の山本太郎教授が今回の地震で被害を受けた地域に向かいました。山本教授はハイチ地震の際も国際援助隊の第一陣として現地に赴いた実績を有する緊急医療支援の専門家です。特定非営利活動法人アムダと同行し,医師としての支援活動のほか,今後の本学の支援方策を進めるうえでの情報を把握する先遣の役目も果たします。また同日、文部科学省の依頼により長崎大学病院国際ヒバクシャ医療センター所属の医師ならびに看護師5人を福島市に派遣し、汚染地域の住民の心身の健康維持のための活動を開始しました。さらに14日には、水産学部の練習船「長崎丸」が水、食糧、毛布など緊急援助物質を満載して被災地に向けて出航しました。調漸理事をリーダーとする本学の教職員・学生11名が県の職員4名とともに乗り組みました。被災者の皆様への支援とともに、今後の本学の支援方針を決定するための情報収集にもあたってもらいます。現地で実際に起こっていることをしっかり目に焼きつけて帰還し、私たちに被災地の実情を報告し、長崎大学が 今後どのような支援活動を行うべきかを教えてくれるはずです。

 長崎大学は、日常業務を少々犠牲にしても、東日本巨大地震の被災者の皆様の支援と被災地の復興支援に尽力することを決断しました。長期にわたる活動となるでしょうが、政府や自治体など関係諸団体との緊密な連携の下、長崎大学の持ち味を最大限に生かして、実効ある支援活動を行なっていきたいと思います。

平成23年3月15日
長崎大学長
片峰 茂

東北地方太平洋沖地震に関するプレスリリース

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